鵜
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山本周五郎 短編作品
発表年 | 発表誌 |
昭和 29 (1954) 年 | 講談倶楽部 |
著者名 | 作品名 |
山本周五郎 | 鵜(う) |
時 と 所
江戸時代 某城下
主な人物
- 布施 半三郎(ふせ) 江戸邸(やしき)の次席家老の一人息子 癇癪持ちで喧嘩ばかりで、二十八歳になるが縁談はつっぱね、役に就かせようとしても承知しない というので、江戸詰から三年間の国詰、謹慎を命ぜられた
- ただこ 年は二十歳くらい、名はさだ 「ただこ」というのは幼いころ自分で訛って呼んだもの 半三郎が二十日もかけてみつけた釣り場、七十尺ばかりの断崖の下にある淵で会った
Memo
「だってあなたは、せっかく釣った魚を、いつも逃がしておしまいになるじゃありませんか」
「どう云おう」 半三郎は笑おうとした、「困ったな、おれはこんなときうまくやり返すことができないんだ」
ただこは乾いた声で笑った。 自分で云った言葉に自分で「不吉」を感じたらしい、乾いたような声で笑いながらいそいで云った。
「それで手のほうが先になるのね」
「手が届きさえすればね」
そのとき、池のほうで激しい水音がした。 見るとすぐ向うの水面で、一羽の鵜が暴れていた。 長い頸(くび)をふりながら、翼でばたばた水を叩いている。 傷でも負って苦しんでいるようにみえたが、よく見ると大きな魚を咥(くわ)えていた。 その魚が大きすぎて嘴(くちばし)に余るのを、むりやりに呑み込もうとして、暴れているのであった。
『鵜』文中より
収録本
出版社 | ISBN |
小学館 | 4096772054 |
タイトル |
山本周五郎中短篇秀作選集 5 『発つ』 単行本 | 収録作品 |
野分(のわけ) 契りきぬ はたし状 雨あがる よじょう 四人噺(よにんばや)し 扇野(おうぎの) 三十ふり袖 鵜 水たたき 将監(しょうげん)さまの細みち 枡落(ますおと)し |
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発つ (山本周五郎中短篇秀作選集 5)
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出版社 | ISBN |
新潮社 新潮文庫 | 978-4101134208 |
タイトル |
山本周五郎 『ひとごろし』 文庫本 | 収録作品 |
壷(つぼ) 暴風雨(あらし)の中 雪と泥 鵜 女は同じ物語 しゅるしゅる 裏の木戸はあいている 地蔵 改訂御定法(ごじょうほう) ひとごろし |
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ひとごろし (新潮文庫)
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