花匂う
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山本周五郎 短編作品
発表年 | 発表誌 |
昭和 23 (1948) 年 | 面白世界別冊 |
著者名 | 作品名 |
山本周五郎 | 花匂う |
時 と 所
江戸時代 某城下
主な人物
- 瀬沼 直弥 三男坊の部屋住 二兄の孝之助は十九歳で松島家へ婿養子にいき、直弥が二十九歳のとき父と母が相前後して亡くなり長兄の兵庫が家督をした
- 庄田 多津 屋敷が生垣ひとえの隣合せで、二人は幼いうちから馴染んでいた のちに良人となる矢部信一郎が多津を知ったのも、庭の生垣を中に、直弥を介して話す機会が二度か三度あったからである
Memo
── それを渡したのは朝のことだった。 まだうっすらと霧のながれる時刻に、多津が庭へ花を剪(き)りに来た。 直弥は生垣のところまでいって呼んだ、彼女は微笑しながら近づいて来た。 藤色の細かい縞のある袷(あわせ)と、襦袢の白い襟があざやかな対照をなして、胸もとが際立ってすがすがしくみえた。
「お早うございます ── おおいい香り」 多津は頬笑んだまま脇のほうを見上げた。 「蜜柑がずいぶんよく匂いますこと」
直弥もそっちへ眼をやった。 蜜柑の樹に花が咲いていた。 気がつくとあたりの空気はかなり強い匂いに染っていた。 直弥は眼をかえした。 そして手紙を出して彼女に渡した。
『花匂う』文中より
収録本
出版社 | ISBN |
新潮社 新潮文庫 | 978-4101134437 |
タイトル |
山本周五郎 『花匂う』 文庫本 | 収録作品 |
宗太兄弟の悲劇 秋風不帰 矢押(やのし)の桶(とい) 愚鈍物語 明暗嫁問答 椿説(ちんせつ)女嫌い 花匂う 蘭(らん) 渡(わたる)の求婚 出来ていた青 酒・盃(さかずき)・徳利 |
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花匂う (新潮文庫)
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