竹柏記
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山本周五郎 短編作品
発表年 | 発表誌 |
昭和 26 (1951) 年 | 労働文化 |
著者名 | 作品名 |
山本周五郎 | 竹柏記(ちくはくき) |
時 と 所
江戸時代 某城下
主な人物
- 高安 孝之助 勘定奉行高安良平の一子 父が卒中で倒れて以来、勘定奉行の元方(収納)支配をしている
- 笠井 杉乃 孝之助の幼友達笠井鉄馬の妹 のちに高安家の嫁、孝之助の妻となる
- 岡村 八束(やつか) 孝之助や鉄馬とおなじ年で、その藩で「番衆」というめみえ以上ではあるが中の下くらいの家柄であって、勘定奉行の払方に勤めていた
Memo
それは去年の春、こんど仲人を頼んだ、佐多梅所から貰ったものである。 「竹柏」という、名も清らかであるし、その細葉の、濃緑に白く粉をふいたような、渋みのある、おちついた色も好ましかった。
── 松はときに色を変えることもあるが、竹柏は枯死するまで色を変えない。
梅所はそう云(い)って、根づくまでは此処がよい、と、場所を指定した。 そしてこの夏のはじめに、梅所が来て見て、これならもう移してもよかろうと云ったものである。
── 枯死するまで色を変えない。
枝ぶりの、尋常でつつましいのと、渋く、見飽きのしない葉の色とに、彼はひじょうな愛着を感じていた。 それを妻の居間の、前へ移したのは、その木に、自分の心を託すという、ひそかな想いをこめてのことであった。
『竹柏記』文中より
収録本
出版社 | ISBN |
新潮社 新潮文庫 | 978-4101134277 |
タイトル |
山本周五郎 『あとのない仮名』 文庫本 | 収録作品 |
討九郎馳走(とうくろうちそう) 義経(よしつね)の女(むすめ) 主計(かずえ)は忙しい 桑の木物語 竹柏記 妻の中の女 しづやしづ あとのない仮名 |
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あとのない仮名 (新潮文庫)