三十ふり袖
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山本周五郎 短編作品
発表年 | 発表誌 |
昭和 29 (1954) 年 | 講談倶楽部 |
著者名 | 作品名 |
山本周五郎 | 三十ふり袖 |
時 と 所
江戸時代 江戸市中
主な人物
- お松 亭主の平吉と二人でごく小さな飲屋「みと松」をやっている、三十二歳 夫婦とも人が好いためについ貸し勘定が溜まりがちで、逼迫(ひっぱく)した苦しい状態を続けていた 水戸から出て来たてのころは、誰ひとり頼る者もなくお幸の母お文から肌襦袢やお腰まで貰い世話になった
- 巴屋の旦那 年は四十五六、名は喜兵衛、信州は小淵沢の生れで、巴屋という足袋屋を営んでいる、家庭が淋しいためによそで飲むのを楽しみにしているとか 場違いの客ではあったが、平吉たちの店がおちつくと三日に一度ずつ欠かさず通うように
- お幸(ゆき) 思惑の失敗で「かもじ屋」をたたんだ父は移って来た裏長屋で死んでしまい、母親は頑固な持病の痛風を患い、お幸が慣れない賃仕事に精をだしても去年からの不景気でどの年よりも生活はゆき詰って来ていた 二十七歳になる
Memo
「ねえ、心を鬼にして云うわよ」 とお松は云った、「世間がこんなぐあいだし、病身のおっ母さんを抱えていては、お嫁にゆくこともお婿さんを貰うこともできやしない、それにあんたも年が年だし、もしかして縁があっても、子持ちの処へのちぞえにゆくぐらいがおちだわ、ねえ、そのくらいならいっそちゃんとした人の世話になって、ゆっくりおっ母さんにも養生をさせ、あんたも暮しの苦労からぬけるほうがいいじゃないの、世の中には十五六で身を売る娘だって少なくはないのよ」
『三十ふり袖』文中より
収録本
出版社 | ISBN |
小学館 | 4096772054 |
タイトル |
山本周五郎中短篇秀作選集 5 『発つ』 単行本 | 収録作品 |
野分(のわき) 契りきぬ はたし状 雨あがる よじょう 四人噺(よにんばや)し 扇野(おうぎの) 三十ふり袖 鵜(う) 水たたき 将監(しょうげん)さまの細みち 枡落(ますおと)し |
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発つ (山本周五郎中短篇秀作選集 5)
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出版社 | ISBN |
新潮社 新潮文庫 | 978-4101134345 |
タイトル |
山本周五郎 『扇野(おうぎの)』 文庫本 | 収録作品 |
夫婦の朝 合歓木(ねむ)の蔭(かげ) おれの女房 めおと蝶 つばくろ 扇野 三十ふり袖 滝口 超過勤務 |
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扇野 (新潮文庫)
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