山茶花帖
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山本周五郎 短編作品
発表年 | 発表誌 |
昭和 23 (1948) 年 | 新青年 |
著者名 | 作品名 |
山本周五郎 | 山茶花帖(さざんかちょう) |
時 と 所
江戸時代 某城下
主な人物
- 結城 新一郎 年は二十五六、八千五百石という大身で城代家老結城大学の一人息子
- 八重(やえ) 料亭「桃井」の抱え芸妓、二十一歳 五つの年に担ぎ八百屋をしていた父に死なれ、貧しさに妹を背負って乞食のようなことまでした 十歳の秋に弟妹をいっぺんにはやり病で取られ母が長患いの床に倒れると、入費をまかなうため「桃井」へ住込んだ 母親は二年病んで死んだが借(かり)を返すのに十三の春から客席へ出た
Memo
「いいえほんの我流でございますの」
八重は恥ずかしさに全身が赤くなるかと思え慌てて描いたものをまるめながら立上った。 若侍もちょっと戸惑いをしたようすだった。 彼は持っている扇で無意味に袴をはたいた。
「四五日まえに江戸から来たばかりで、此処の山茶花がみごとというから観に来たんです、貴女(あなた)はいつも来るんですか」
「いいえときたまでございますわ」
そこでまた話が途切れた。 八重はなにかつぎほをと焦ったが、なにか云えば日頃の生活が出そうでどうにも口がきけなかった。 ── 若侍は会釈をしてすぐにそこを立去った。
『山茶花帖』文中より
収録本
出版社 | ISBN |
小学館 | 4096772011 |
タイトル |
山本周五郎中短篇秀作選集 1 『待つ』 単行本 | 収録作品 |
内蔵允留守(くらのすけるす) 柘榴(ざくろ) 山茶花帖 柳橋物語(やなぎばしものがたり) つばくろ 追いついた夢 ぼろと釵(かんざし) 女は同じ物語 裏の木戸はあいている こんち午(うま)の日 ひとでなし |
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待つ (山本周五郎中短篇秀作選集 1)
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