偸盗
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山本周五郎 短編作品
発表年 | 発表誌 |
昭和 36 (1961) 年 | オール讀物 |
著者名 | 作品名 |
山本周五郎 | 偸盗(ちゅうとう) |
時 と 所
平安時代 京の都・鬼鮫の山さい
主な人物
- 鬼鮫(おにざめ) ぬすびとの中の大ぬすびと
- 耳助 左大臣家の小舎人(ことねり)、左大臣の白川の別しょで鬼鮫の手引きをした
- 品子 綾小路に第があり、青瓜と渾名(あだな)のある中将の末の姫、十五歳
Memo
「わたしが盗む側にまわったのは」 と彼は左手の掌(てのひら)を右手の拳で打ちながら云った、「はてしなき労働、凶作、疫れい、洪水、地震、などという貧困と災厄によるのではなく、盗む者と盗まれる者とによってこの世の平衡が保たれている、という現実を認識したからであります、こういう認識が頭にうかぶということは、すなわち、わたくしが盗まれる愚者の群れにではなく、盗む勇気と知恵のある者、一と口に申せば貴族的少数者に属する、という証拠だと信じたからであります、── 貴族的少数者、わたくしはべつにかれらを尊敬するものではない、世の中の釣合を保つことでかれらの側に付いたのだが、かれらはそれを理解しないばかりか、逆にわたくしを偸盗と呼んで追捕しようとするのです、は、かれらがですよ、盗む者であるところのかれらが、同じ側に立つところのこのわたくしをです、── おそらく、あなた方は信じられないでしょう、だが、不幸なことにこれが現実なのであります」
『偸盗』文中より
収録本
出版社 | ISBN |
新潮社 新潮文庫 | 978-4101134147 |
タイトル |
山本周五郎 『おさん』 文庫本 | 収録作品 |
青竹 夕霞(ゆうもや)の中 みずぐるま 葦(あし)は見ていた 夜の辛夷 並木河岸(なみきがし) その木戸を通って おさん 偸盗 饒舌(しゃべ)り過ぎる |
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おさん (新潮文庫)
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