夢ぞ見し
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藤沢周平 短編作品
発表年 | 発表誌 |
昭和 52 (1977) 年 | 小説現代 |
著者名 | 作品名 |
藤沢周平 | 夢ぞ見し |
時 と 所
江戸時代 某城下
主な人物
- 小寺 甚兵衛 御槍(おやり)組に勤めて、二十五石 仕事は武器庫の番人のようなことで、時どき手下の足軽に槍や鉄砲を手入れさせ、自分も一緒になって槍を磨いたりしているらしい ここ二月(ふたつき)ばかり、帰宅が遅くなった
- 昌江 甚兵衛の妻女 十八で嫁入り、いまは二十八 子供がさずかることはないらしいと、三年前にあきらめた
- 溝江 啓四郎(みぞえ) 二十三、四の若い男、家においてしばらく世話をすることに 甚兵衛が五年前、江戸詰で出府(しゅっぷ)したときに世話になった上役の息子
Memo
昌江は茶の間で縫物をしている。 同じ部屋で、縁側に近い畳の上に、啓四郎が行儀わるく腹ばって、熱心に読本(よみほん)をめくっている。
夏も一番暑いところはすぎて、七ツ(午後四時)近くになると、風がいくぶん涼しくなる。 軒から吊るした日よけの簾(すだれ)が、時どき風に揺れる。 そのたびに、庭を照らしている日光が、刺すように眼に飛びこんでくる。 日射しだけは、まだ夏が過ぎたわけではないというように、猛(たけ)だけしかった。
昌江は時どき眼をあげて、啓四郎を見る。 そして何となく微笑がこみあげてくるのをそっと押える。
だんまり亭主にそばにいられると、それだけで暑くるしい感じになるが、おなじに黙っていても、啓四郎のことはあまり気にならない。 それどころか、心の中に、少し浮ついた楽しげな気分が動く。 亭主には悪いが、姿、形に歴然と差があるのだからいたしかたない。 やはり美男子といる方が女は心楽しいのだ。 さまざまの夢が見えてくる。 甚兵衛といても、夢など見えはしない。
『夢ぞ見し』文中より
収録本
出版社 | ISBN |
文藝春秋 文春文庫 | 978-4167192051 |
タイトル |
藤沢周平 『長門守の陰謀』 文庫本 | 収録作品 |
夢ぞ見し 春の雪 夕べの光 遠い少女 長門守の陰謀 |
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長門守の陰謀 (文春文庫)
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出版社 | ISBN |
文藝春秋 | 978-4163628103 |
タイトル |
藤沢周平短篇傑作選 1 『臍曲(へそま)がり新左』 単行本 | 収録作品 |
紅の記憶 証拠人 臍曲がり新左 一顆の瓜 冤罪 竹光始末 遠方より来る 雪明かり 小川の辺 木綿触れ 夢ぞ見し |
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臍曲がり新左 (藤沢周平短篇傑作選 3)
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出版社 | ISBN |
文藝春秋 | 978-4163642505 |
タイトル |
藤沢周平全集 第五巻 単行本 | 収録作品 |
闇の顔 小川の辺(ほとり) 木綿触れ 夢ぞ見し 一夢の敗北 小鶴 梅薫る 孫十の逆襲 泣くな、けい 泣く母 飛べ、佐五郎 山桜 帰還せず 報復 弾む声 切腹 花のあと -以登女(いとじょ)お物語- 雪間草 悪癖 麦屋町昼下がり 三ノ丸広場下城どき 山姥橋夜五ツ 榎屋敷宵の春月 |
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藤沢周平全集 第五巻
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