藤沢 周平
報復
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藤沢周平 短編作品
発表年 発表誌
昭和 56 (1981) 年 小説新潮
著者名 作品名
藤沢周平 報復

時 と 所

江戸時代  某城下

主な人物

Memo

 松平は胸が変に空っぽになるのを感じた。 その空っぽの胸に少しずつ悲しみが流れこんで来た。
 邦之助がいて、そばに赤ん坊を抱いた康乃がいる。 庭の花畑の中で、康乃がなにか話しかけるのに、邦乃助はふむ、ふむとだけ答え、一度だけ太い声で笑った。 春の日射しがさしかけるその一幅の絵の中には、奉公に出たばかりで、真新しく藍が匂う半纏(はんてん)を着た松平もはめこまれている。
 柚木という家のその絵は失われてしまって、跡かたもなかった。 松平は唇を噛みしめた。 すると、胸の中のものは、歯の間から洩れて、低いすすり泣きになった。
                     『報復』文中より

収録本

出版社 ISBN
新潮社  新潮文庫 978-4101247175
タイトル
藤沢周平  『霜の朝』  文庫本
収録作品
報復  泣く母  嚏(くしゃみ)  密告  おとくの神  虹の空  禍福  追われる男  怠け者  歳月  霜の朝
Amazon  霜の朝 (新潮文庫) 
出版社 ISBN
文藝春秋 978-4163255804
タイトル
海坂藩大全(うなさかはんたいぜん) 下  単行本
収録作品
梅薫る  泣くな、けい  泣く母  山桜  報復  切腹  花のあと -以登女(いとじょ)お物語-  鷦鷯(みそさざい)  岡安家の犬  静かな木  偉丈夫
Amazon  海坂藩大全 下 
出版社 ISBN
文藝春秋 978-4163642505
タイトル
藤沢周平全集 第五巻  単行本
収録作品
闇の顔  小川の辺(ほとり)  木綿触れ  夢ぞ見し  一夢の敗北  小鶴  梅薫る  孫十の逆襲  泣くな、けい  泣く母  飛べ、佐五郎  山桜  帰還せず  報復  弾む声  切腹  花のあと -以登女(いとじょ)お物語-  雪間草  悪癖  麦屋町昼下がり  三ノ丸広場下城どき  山姥橋夜五ツ  榎屋敷宵の春月
Amazon  藤沢周平全集 第五巻 

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