藤沢 周平
竹光始末
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藤沢周平 短編作品
発表年 発表誌
昭和 50 (1975) 年 小説新潮
著者名 作品名
藤沢周平 竹光始末

時 と 所

江戸時代(寛永年間)  海坂城下

主な人物

Memo

「あのな、お前さま」
「む」
「いっそお女郎に出ないかと、きつい言いようでございましたよ」
「なに!」
 丹十郎は箸(はし)を置いた。 茫然とし、やがてみるみる顔面を真赤に染めた。
「無礼ものが」
 丹十郎は低く唸ると、立ち上がって押入れに歩き、中から刀を出して腰に帯びた。
「お前さま、何をなされます」
 多美が立ち塞(ふさ)がって手をひろげた。
「亭主を斬る。 許せん」
「お気を鎮められませ。 亭主を斬って何の益がございますか。 私や子供たちはどうなります? これまで何のために苦労して参ったのですか」
 丹十郎はしばらく多美を睨みつけたが、やがてのろのろと刀をはずすと、押入れに蔵(しま)った。
「飯は、もうよい」
 ぽつりというと、丹十郎は赤茶けてけば立っている畳の上にごろりと寝た。
「明日、刀を売ってくるぞ」
                     『竹光始末』文中より

収録本

出版社 ISBN
新潮社  新潮文庫 978-4101247021
タイトル
藤沢周平  『竹光始末』  文庫本
収録作品
竹光始末  恐妻の剣  石を抱く  冬の終りに  乱心  遠方より来る
Amazon  竹光始末 (新潮文庫) 
出版社 ISBN
文藝春秋 978-4163628103
タイトル
藤沢周平短篇傑作選 1  『臍曲(へそま)がり新左』  単行本
収録作品
紅の記憶  証拠人  臍曲がり新左  一顆の瓜  冤罪  竹光始末  遠方より来る  雪明かり  小川の辺  木綿触れ  夢ぞ見し
出版社 ISBN
文藝春秋 978-4163255705
タイトル
海坂藩大全(うなさかはんたいぜん) 上  単行本
収録作品
暗殺の年輪  相模守は無害  唆(そそのか)す  潮田伝五郎置文(うしおだでんごろうおきぶみ)  鬼気  竹光始末  遠方より来る  小川の辺  木綿触れ  小鶴
Amazon  海坂藩大全 上 
出版社 ISBN
文藝春秋 978-4163642406
タイトル
藤沢周平全集 第四巻  単行本
収録作品
暗殺の年輪  ただ一撃  紅(べに)の記憶  証拠人  唆(そそのか)す  恐妻の剣  潮田伝五郎置文  密夫の顔  嚏(くしゃみ)  十四人目の男  桃の木の下で  臍曲(へそま)がり新左(しんざ)  夜の城  冤罪(えんざい)  一顆(いっか)の瓜(うり)  鱗雲(うろこぐも)  鬼気  竹光始末  果し合い  遠方より来る  乱心  雪明かり
Amazon  藤沢周平全集 第四巻 

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