藤沢 周平
入墨
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藤沢周平 短編作品
発表年 発表誌
昭和 49 (1974) 年 小説現代
著者名 作品名
藤沢周平 入墨

時 と 所

江戸時代  江戸市中

主な人物

Memo

 眼の隅で人影が動いた。 卯助が立ち上ったところだった。 卯助は相変わらず七ッ過ぎになると、どこからともなく店の前にやって来て、木の下に立っている。 すると時刻を測っていたおりつが外に出て呼び入れるのだが、卯助の顔には何の表情も現われなかった。 皺の中に埋もれたような眼を伏せて、ゆっくり店に入り、そこが定められた席であるかのように、入口に一番近い飯台の端に座り、手をこすりながら、熱い銚子が運ばれてくるのを待つのである。 卯助が、そのようにして店の隅に座るようになってから、二十日ほど経っていた。
 おりつは勝手に卯助を呼び入れ、勝手に酒を運んだが、お島は見て見ぬふりをする、という態度だった。
「一本だけだよ。 あのじじいに酒を飲ませる義理なんてものは、これっぽっちもないんだからね」
 と釘をさしただけである。
                     『入墨』文中より

収録本

出版社 ISBN
文藝春秋  文春文庫 978-4167192174
タイトル
藤沢周平  『闇の梯子』  文庫本
収録作品
父(ちゃん)とよべ  闇の梯子  入墨  相模守は無害  紅の記憶
Amazon  闇の梯子 (文春文庫) 
出版社 ISBN
文藝春秋 978-4163628202
タイトル
藤沢周平短篇傑作選 2  『父と呼べ』  単行本
収録作品
賽子無宿  帰郷  恐喝  父と呼べ  闇の梯子  入墨  馬五郎焼身  おふく  穴熊
出版社 ISBN
文藝春秋 978-4163642109
タイトル
藤沢周平全集 第一巻  単行本
収録作品
溟(くら)い海  囮(おとり)  賽子無宿(さいころむしゅく)  黒い縄  帰郷  恐喝  夜が軋(きし)む  割れた月  闇の梯子  父と呼べ  疑惑  密告  入墨  馬五郎焼身  旅の誘(いざな)い  鬼  おふく  霜の朝  時雨(しぐれ)のあと  穴熊  冬の終りに
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